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と言いましたが、今では20代・30代の人が60代・70代の人と積極的にこのグループを通じてお話ししています。今まで埋もれていた人資源というものが発掘されはじめています。例えば「あそこのお婆さんは元着付けの先生だったから、今度着付けを教えてほしいね。」などといった具合で、そのお婆さんが着付け教室をタイムダラーの「グループだんだん」の貨幣で教えるようになったなど、会話が島に生まれてきたというような事情があります。

 

長倉 各フィールドの方からの意見を伺って思うのは、ボランティア活動というのは市民自身の自発的な行為、それはかなり積極的な協力がないとできていかないのかなと思うわけですが、ただ私も含めまして今、ボランティア団体の殆とが運営に問題を抱えているというのも事実です。つまり、社会的なネットワークの整備、NPO法案がまだ通っていなかったりと、人格なき草の根団体ということで社会的なバックアップが何もないこともあげられると思います。
他方で高齢化がどんどん進んでおり、介護を待っている人にも待ったなしという感じです。こういった条件の中で、ボランティア団体はボランティア団体で苦しんでいます。このような状況では自治体とボランティア団体のパートーナシップというのは切っても切れない関係になってきている気がいたします。
各フィールドでお互いの草の根なら草の根、自治体のなかでの悩みがあると思いますので、今度は自分が運営している主体に立ってお話しいただきたいと思います。ヘロン久保田さんの方から今の現状を踏まえて、これからの展開や問題点についてお話ください。

 

●ニーズにあったサービス活動の必要性について

 

ヘロン久保田 この「グループだんだん」についてですが、私は実際に関前村に住んでいませんし、どのように運営しているのか全体的にしか分かりませんが、関前村の成功しているポイントについてお話します。それは住民主義であるため、期間にしばられないで自由に活動ができていることです。また少しずつではありますが、タイムダラーの社会的役割である異世代間の交流、埋もれていた人的資源の発掘、そして市場経済のカネとモノの交換とは違った非市場経済での思いやりの支援で住民が豊かさを感じはじめていることです。確かにコミュニケーションの過疎から始まったこの事業ですが、異世代間だけでなく行政と住民の間にもコミュニケーションが生まれてきています。
例えば、関前村には過疎地のための福祉センターがありますが、そこに11あるケアハウスの内、2部屋しか利用されていません。それは、このような立派なハードができる前に住民との十分な話し合いができていなかったからです。
関前村が必要としているのはこんな立派なケアハウスではなく、歩いていける所に廃屋などを利用した託老所があればいいのです。そこで「グループだんだん」の人が助け合ってお弁当も配食サービスではなく、皆が作ったものを持ち寄って集まれる場所が欲しいのです。
もし、関前村が3年間ぐらいじっくりと島の人達と話をしていれば、このように必要でないハードは作らなかったと思います。

 

 

 

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